コラム

予防医学の現状と今後の課題

  Hama_dr1209_1 近年、「アンチエイジング」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。特に化粧品などの広告を通して耳にする事が多い為か、アンチエイジング=美容といったイメージを持たれる方が多いようです。しかし、本来アンチエイジングとは「予防医学」という概念から生まれた言葉で、「加齢とともに発症頻度の高まる疾患を未然に防ぐ」事を意味しています。

筆者は「予防医学」という意味でのアンチエイジングを実現するために、医療の現場で日々患者様と接しております。
日本人は欧米人と比較して予防という概念に疎いと言われてきました。しかし、実際にクリニックで診療を行っていると、徐々にではありますが予防医学という概念が浸透してきているように感じます。超高齢化社会に突入し、両親の介護をする方が増える中で、「子供の世話になりたくない」という考えが広まりつつあるのかもしれません。

この様な変化の中で、我々医師が医療技術として提供できる治療にはどの様なものがあるのでしょう。健康な身体を保ち続けるための「予防医学」としては、ホルモン補充療法や、サプリメント療法、そして身体に溜まった有害重金属を排出するキレーション療法などがあげられます。また、生活習慣病になるリスクを判定する「予測医学」としては、遺伝子検査等があります。その他、日本では未だ導入しているところは少ないですが、フードアレルギー検査や特定の薬剤に対する感受性検査など、欧米ではすでに多くの検査や治療が臨床応用されています。予防医学や予測医学は、これら医療技術の発展とともに今後さらなる進化を遂げることが予想されます。

ただし、予防医学の発展は医療技術の進歩のみでは実現しません。この分野では特に、患者様への「正確な情報の提供」が重要になってきます。一般の保険診療では、仮に患者様が何も理解していなくても、医師や薬剤師が大抵の面倒を見てくれます。当クリニックに来院される患者様の中にも、「病院でこんな薬を渡されて飲んでいますが、私どこか悪いんでしょうか」といった質問をされる方がよくいらっしゃいます。一般診療では、患者様が病状の一切を理解していなくても、処方された薬を飲んでいれば症状が回復に向かうといったことが多々あります。
ところが、予防医学の分野ではこの薬さえ飲んでいれば大丈夫といった特効薬は存在しません。我々医師が患者様ひとり一人に適切な情報を提供し、患者様自身がその情報を元に日常生活を見直すことが非常に重要になります。

その為、医師には幅広い知識が必要になってきます。例えば、肥満の患者様には栄養・運動指導を行いますし、PSA値の高い患者様には前立腺癌予防についての情報を提供します。実際に疾患の兆候が現れた際は、それがどの様な疾患に起因するものであるのかを適切に判断し、その治療に特化した専門病院を紹介します。

同時に、来院の敷居を低くするという事も重要です。検査値を用いて診断を行う検診医と異なり、予防医学では患者様のバックグラウンドまで捉えた上で、改善点の提案を行います。その為、いつでも来院でき、何でも気兼ねなく話して頂ける雰囲気作りが必要となってきます。

今後の予防医学の発展には二つの重要な課題があるのではないでしょうか。一つは、患者様の健康状態を医学的に把握するための種々の検査技術の発達です。既存の検査の精密性を向上すると同時に、新規検査の開発が望まれます。そして二つ目は、高いカウンセリング能力と幅広い医学知識を有する医師の育成です。予防医学を考えるクリニックでは本格的な治療や手術を行う訳ではありませんから、その類の深い知識は必要ありません。代わりに、全ての領域を網羅する幅広い知識が必要となります。

予防医学はまだまだ新しい分野であり、課題も山積みです。しかし、数ある課題に取り組み、患者様と共に、患者様のより高いQ.O.L.(生活の質)を実現することが、この分野に携わる医師の使命ではないでしょうか。

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